大判例

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福岡地方裁判所 昭和26年(行)39号 判決

原告 武内謙介

被告 福岡県知事

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は被告が原告に対してなした昭和二十三年度第一種事業税千八百七十五円の賦課処分の無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求めその請求の原因として被告は原告が昭和二十二年に製塩業及び微粉炭販売業をなし、これにより二万円の所得を得たものとして、その所得に対し昭和二十三年度第一種事業税を賦課し第一期分を同年八月二十日第二期分を同年十二月十日に各金九百三十七円宛納税すべき旨告知をなした。然し乍ら原告は昭和二十三年度納税賦課処分の基礎となつた昭和二十二年中には製塩業、微粉炭販売業、その他事業税の対象となる如き、如何なる事業も営んだことはないから、原告に対する前記課税処分は課税物件の存在しない所に課税した違法があるというべく、この様な瑕疵は所謂無効原因たる瑕疵と解すべきであるから茲に右課税処分の無効確認を求める為本訴請求に及ぶと述べ、

被告の抗弁に対し、原告は右課税処分の告知を受けた後法定期間内に異議の申立をしたが、被告はこれに対し何らの裁決も与へず差押を強行したものであり、且本件は右課税処分の無効確認を求める訴であるから所謂訴願前置主義に基く出訴期間の制限等の規定の適用を受けないものであると述べ原告は昭和二十二年一月訴外宇美町より、同町の経営していた福岡県粕屋郡和白村海岸の製塩所を譲り受け手持の微粉炭八十一キロを、同年五月中旬より八月上旬迄の間に同所に運搬して人夫を八名雇入れ製塩事業に取かゝらうとしたことは認めるが間もなく当局より中止を命ぜられたものであると陳述した。(立証省略)

被告訴訟代理人は本案前の抗弁として原告の訴却下の判決を求めその理由として原告の本訴請求は要するに本件課税処分は課税対象のない所に課税した違法があつて無効のものであるからその無効確認を求めるというに在るが、原告は昭和二十二年中に第一種事業税の対象となるべき製塩業及び微粉炭販売業を営んでいるのであるから右課税には無効原因たる瑕疵はなく、又右課税額に対し争があるならば、所定の訴願手続を経て後、右課税処分の取消又は変更の訴を提起すべきであるに拘らず、原告は法定期間内に異議の申立をなさず(尤も期間経過後異議申立をなしたが被告は適法の異議として取扱はなかつた)且行政事件訴訟特例法第五条所定の出訴期間を徒過した為、同法に基く、課税処分取消又は変更の訴を提起することができなくなつたため、名を無効確認にかつて本訴に及んだものであるから本訴はこの点に於ても不適法であり却下さるべきものであると述べ本案に付、主文同旨の判決を求め答弁として原告の請求原因事実中被告が原告に対しその主張の如き昭和二十三年度第一種事業税を賦課し、告知した事は認めるがその余の事実は否認する。原告は昭和二十二年中に製塩業及び微粉炭販売業を営んで、二万円の所得を得たものであつて被告の課税には何ら違法のかどはないと述べた。(立証省略)

三、理  由

先づ被告の本案前の抗弁に付審按するに原告の本訴請求は原告に対する本件事業税の課税処分の無効なることの確認を求めるというにあつて凡そ行政処分の無効確認訴訟を提起するに付ては所謂訴願前置主義に基く行政事件訴訟特例法第五条所定の出訴期間の制限の規定の適用はないと解すべきであるからこの点に関する被告の抗弁は採用の限りでない。

よつて進んで本案に付て考察するにすべて行政処分の無効確認の訴はその行政処分の瑕疵が明白にして且重大な場合に限り之を訴求し得るものと解すべきところ原告は何等事業税の賦課対象となる事業を営んでゐないのに之に事業税を賦課したのは無効だと主張するのであるが原告が昭和二十二年一月頃訴外宇美町から福岡県粕屋郡和白村海岸の製塩所を譲り受け手持の微粉炭八十一キロを同年五月中旬から、八月上旬迄の間に同所に運搬して人夫を八名雇入れた事は当事者間に争がなく、成立に争のない甲第一号証及び証人石川熊男同入江灘次郎、同宮津常三郎の各証言を綜合すれば、原告は右期間内に運搬した微粉炭八十一キロを右製塩所の為に使用し、一日一斗乃至五斗の製塩を採取していた事が認められ、他に右認定を左右するに足る証拠はないから、被告が原告の右事業を製塩業及び微粉炭販売業と認め、昭和二十三年度の事業税を賦課したことは相当の理由があるものというべく右課税処分に瑕疵ありとするも右瑕疵は単に取消又は変更を求むる訴によつて救済を受け得るに止まり之を目して明白にして且重大なものとは到底認めることが出来ない。従つて被告の本件課税処分には無効原因たる瑕疵は存しないものと解すべきである。

さすれば原告の本訴請求は爾余の判断をまつ迄もなく理由のないことは明らかであるから、失当としてこれを棄却すべきこととし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 高次三吉 大江健次郎 今富滋)

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